100人との対話 第2回

―「4匹のワンちゃんと、これからもずっと暮らしたい」

                            相続を機に考える、理想の住環境とは? ―


お名前:内田さん
お住まい:東京都・区分マンション
ペット:小型犬4匹

今回は小型犬4匹と暮らす内田さんとの対話をご紹介します。
内田さんはこれからの人生を見据えて、「年をとってからの住み替え」や「ペットを複数飼える物件を見つけること」などの悩みを抱えています。そういった悩みをふまえて、どんな住まいが自分にとって理想なのか、一緒に話し合いました。


■対談:4匹の愛犬とともに暮らす現状と、相続による住み替えへの思い

石原:
「本日はお時間ありがとうございます。まずは、内田さんが今お住まいのビルと、4匹のワンちゃんについてお伺いしてもよろしいですか?」

内田さん:
 「こちらこそよろしくお願いします。今は葛飾区にある父の所有ビルのワンフロアに住んでいて、兄弟も同じ建物の別フロアに住んでいる状態です。ペットは4匹の犬――ブリュッセルグリフォン1匹、プチブラバンソンの母と娘の2匹、そしてシーズーとチワワのミックス1匹――で、みんな小型犬ですが、多頭飼いゆえにお世話はなかなか大変です。 最近、相続の話が具体的になってきて、いずれこのビルを手放す可能性が高いんです。そうなると私自身も引っ越しを考えなきゃいけない。でも、58歳の私が、4匹の犬と一緒に住める物件なんて本当に見つかるのか、っていう不安があって……。私は、あまりにも“老人ホームみたいな環境”になるのも嫌だし、そもそも簡単に入居できるペット可高齢者施設があるかどうかも微妙ですよね。加えて、賃貸にしても「60歳過ぎると厳しい」っていう現実がありそう。必然的に分譲で買うしかないかなと思いつつ、“4匹多頭OK”となるとハードルは高いなと」


■ペット共生住宅の不足と、多頭飼育ならではの悩み

石原:
「おっしゃるとおり、4匹OKな分譲マンションを探そうにも、多くは頭数制限が2匹まで、しかも合計体重何kgまで……みたいに細かいルールがあったりします。賃貸はなおさら、4匹となるとオーナーさんが渋るケースが多いのが現状です。
頭数の今後のご不安以外に、今お住まいのビルの中でワンちゃんを飼ううえで改善したいことってありますか?」

内田さん:
 「たとえば複数世帯の玄関が1階で共通になっているので、兄弟や親が出入りするときに“犬たちが飛び出さないか”をすごく気にしなきゃいけないんです。みんなが犬好きってわけじゃないですし、犬が苦手な親族もいるので、繋いだり抱っこしたりして動線がぶつからないように注意するのが地味に大変です。
それから来客時のトイレスペースの問題があって…。廊下の一角に犬トイレを4枚分並べているんですけど、そこを通らないとリビングに行けないので、友人が来るときはちょっと移動したりして。でも移動すると犬が混乱して失敗しちゃう。結果、誰かを家に呼ぶのが気まずくなってしまったりしています。」

石原:
 「匹数分ということでトイレ4セット……そりゃ廊下はいっぱいになりますね(笑)。においがネックでお客様を家に招くのを控えている、という方は多くいらっしゃっていて、動線とトイレの関係性はペット共生住宅の大きなテーマだとおもいます。もし住み替えるなら“来客動線とは被らないワンちゃん専用コーナー”を設計段階で考えておくのが理想ですね。」

内田さん:
 「本当にそう思います。あとゴミ捨ても結構問題で…。4匹飼っていると毎日のトイレシーツや排泄物がとても多いのです。燃えるゴミの日まで洗面所に置いているフタ付きゴミ箱に入れているのですが、夏場は臭いが籠もって。バルコニーもあるにはあるんですけれど、炎天下でさらににおいが増しそうで使いづらい。結局洗面所に置くしかないんです。」

石原:
「マンションで共用のゴミ置き場に24時間出せる設備があればいいのですが、そういう設備はまだ限られているので、トイレ計画と併せて排泄物のゴミ置き場のレイアウトも重要な計画ポイントです。」


■夏の散歩問題 -「暑すぎて出かけられない」対策はある?

内田さん:
 「今、私が一番困ってるのが“夏の散歩”なんです。7~9月はアスファルトが焼けるように熱くなるから、散歩させてあげたいのに危険で……夜になっても熱がこもってるときがあって、結局短時間で切り上げちゃう。犬たちもストレス溜まるだろうなって思うんですけど、命にかかわるから仕方なくて。」

内田さん:
「真夏に歩ける散歩コースは、”相応のお金を出しても実現したい”と思うくらい魅力的です。散歩コースというほどでなくても、たとえばマンションの敷地内をぐるっと回れるルートを作って、アスファルトではなく熱を持ちにくい素材にして屋根をつけるだけでも全然違うでしょうし。月額の管理費が上がるとしても、夏の散歩が命がけになるより断然いいなって…。」

石原:
「都市部の夏の暑さとの闘い、人も大変ですが、ペットも大変ですよね。ときどき真夏の日照りの中を犬と散歩をしているのをお見掛けすることがあるのですが、飼い主の時間帯の都合もあるかと思いますが配慮が必要な点だと思います。                                もし“ペット共生マンション”を新築するなら、夏場でも安心して歩ける屋根付きの屋外通路を作るとか、特殊な素材で仕上げた“屋外ドックラン”を設けるなどが考えられますね。ただ、それには相応のコストがかかるので、そこに住む人たちに『夏の散歩コースが欲しい!』というニーズがなきゃいけない。なかなか一般の分譲マンションでは踏み切りにくいです。そういう設備を備えるために、犬飼いさんが集まってマンションを建てる「コーポラティブハウス」という企画を近い将来に実現したいと思っています。

夏の3か月間散歩できないのは、お互いにつらいですもんね。ペットのQOL(生活の質)を上げるという点でも、そういった仕組みづくりはぜひ検討する価値があると思います。


「高齢でも多頭飼育を続けたい」そのために必要なケアサービス

内田さん:
 「もし引っ越しをしたらお風呂の隣にペット用の簡易シャワーコーナーを作れたらいいと思ってるんですが、マンションって、水回りとか配管の問題でできないことも多いじゃないですか。やっぱりマンションだと難しいですか?」

石原:
「開放的なシャワーコーナーではなくなりますが、ユニットのシャワーブースを設置するスペースがあれば少し床の高さを調整すれば可能ですよ。ただ、お風呂の隣に開放的なシャワーコーナーをつくるというのは、いわゆる「造作浴室」(ユニットバスではなくコンクリートに直接防水を施してタイルを貼るような作り方)をイメージされているとおもいますが、管理規約でNGの場合が多いです。      造作浴室は漏水のリスクが増すので、住人がそのリスクを理解して造作OKの規約にすればつくれます。コストも考えると猫ちゃんだけなら洗面ボウルを大きくするなどの方がよいかもしれません。  ペット共生に求められるスペックと、建物の維持管理の接点を見出していく難しさが、ペット可物件が少ない理由の一つのだとおもいますが、その中でもかなりコアな部位の議論ですね(笑 
ちなみに、体を洗ってあげる等のケアは、今は4匹のお世話を全部内田さんがお一人でされてるんでしょうか? もし急に体調を崩したり、ご家族が倒れたりしたら、犬のお世話が手薄になるリスクもあると思うんですが……ペットシッターなど利用されていますか?」

内田さん:
「いえ、ペットシッターは頼んでないんです。他の家族もいるので、カギを預けて家に入ってもらうのが不安っていうのもあるし、何より4匹となると費用的にも大変そうです。もう急病に備えてプランを考えなきゃいけない年齢になってきたので、マンション自体に“緊急時のペットケア”を頼める仕組みがあればいいなと。
病気とか事故って突然だから、預け先を予約する時間もないんですよ。そんなときに管理会社やコンシェルジュがペットホテル代わりに一時預かりしてくれるとか、提携のシッターさんをすぐ手配してくれるとか……そういうサービスがあると本当にありがたいですね。」

石原:
「まさに“ペット共生サービス”の一環ですよね。大手管理会社やシニア向け分譲マンションなどで、コンシェルジュがペットケアまでやってくれるところも徐々に登場していますが、まだまだ少ないです。
でも、多頭飼育している方や高齢者の方にとっては、そこが“入居を決めるかどうか”の大きな分かれ目になると思います。もし月々2~3万円ぐらいオプション料金が上乗せされても、内田さん的には検討の余地ありですか?」

内田さん:「はい、そこは本当に選べるなら出してもいいなって思います。“全部込み込みで家賃+5万円”とかになるとさすがにキツいですけど、必要なオプションだけ選んで2~3万円の追加で済むならありがたい。
たとえば不在時にトイレだけ掃除してくれるプランとか、緊急時に預かってくれるプランとか、段階的なサービスがあって、それぞれに料金が明確なら検討しやすいですよね。」


今後の展望:住まいに求める「ペット共生」の具体像

石原:
「内田さんのお話を総合すると、多頭飼育OKの物件そのものが少ない、トイレやゴミ問題で顧客を呼びづらい、緊急時に頼れるサービスがない、このあたりが大きな課題ですね。
もしペット共生型マンションを計画するとしたら、ドッグランや夏場対応の散歩ルート、動線とトイレ配置の関係性、コンシェルジュサービスなどがポイントになりそうです。あと、4匹を連れての引っ越しが高齢でもスムーズにできるよう、エレベーターや駐車場の動線も検討する必要がありそうですね。」

内田さん:
「はい、どれも本当に切実で。私が困ってるってことは、多くの方が同じように困っているんだろうなって思うんです。
コーポラティブハウスで“犬飼いさんたち”が集まってマンションを作るなんていうのも、参加できるタイミングが合えば興味あります。できれば東京近郊がいいんですが、実際そういう企画が動き出したらぜひ教えてください。
それまでに私も家賃や購入費など予算感を整理しておきたいですし、相続の都合で急に出ていかなきゃならないときも焦らないよう、情報収集しておこうと思います。」

石原:
「ありがとうございます。私のほうでも、ペット共生向け物件や企画が立ち上がった際にはメルマガを通じて随時お知らせします。いざ住み替えになる前に、どういう間取りやサービスが理想かイメージしておくとスムーズですよ。ぜひ一緒に考えていきましょう。」


結び

4匹のワンちゃんと暮らすや内田さんのケースは、多頭飼育で高齢にも差しかかっているペットオーナーが直面する課題を浮き彫りにしました。家族には犬が苦手な方や体が不自由な方もいるかもしれない。夏の散歩は命にかかわる。突発的な病気で飼い主が家を空けるとき、預かり先の確保ができるかどうか……。それらを「大変だけど仕方ない」と我慢し続けている方は多いのではないでしょうか。

でも、内田さんが願うように、“ペット専用コンシェルジュ”や“散歩ルートの暑さ対策”、“来客動線とは分離したトイレスペース”など、マンション設計で解決できることはたくさんあります。コストや管理規約のハードルはあるものの、そこをペットオーナー同士が協力して乗り越えられれば、高齢者でも無理なく、周囲に気兼ねせず、多頭の愛犬たちと暮らし続けられる住まいが実現できるかもしれません。

私たちも今後、ペット共生マンションの企画を通じて、そうした理想を形にしたいと考えています。ペットと飼い主が最後まで安心して暮らせる家づくり -それは決して夢ではないはずです。

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