100人との対話 第6回

はじめに

お名前:香川さん(仮名)
お住まい:東京都・賃貸マンション
ペット:雑種犬1匹(保護犬)

 都内の賃貸マンションで保護犬と暮らす香川様は、より多くの保護犬を受け入れたいとの想いから、2匹以上の犬と安心して暮らせる住まいを検討中です。将来的には防音性・散歩導線・収納・床材に配慮した戸建てを検討しており、ご自身の希望がどのくらいの土地に実現できるのかをラフプランを通じて共に考えていきます。


1. 保護犬との出会いと住まいの制約

石原「まず、今の住まいに関して伺いますが、保護犬との暮らしはどんな経緯で始まったのでしょうか?」

香川さん「リモートワークになったタイミングで保護犬のボランティア活動を始めたんです。そこで出会ったのが今のワンちゃんでペット可の物件に引っ越しました。雑種で体重が16kgもあるので、10kg以下のペットしか認められない賃貸が多く、本当に探すのに苦労しました。」

石原「大型犬可の物件は本当に少ないですからね。そこからまた新しい住まいを探されている理由についてもお聞かせいただけますか?」

香川さん「苦労して探した今のマンションですが、1匹までという制約がありました。実は専門学校で訓練士課程を修了していて、本格的に保護活動をしていきたいのです。里親さんを見つけて里子に出してまたあたらしい犬をあずかって、という循環を2匹位でつくっていきたいのですが、もう一匹犬を預かろうとしても制約で活動を広げることができません…」


2. 理想のペット共生住環境とは

石原「専門の教育を受けた上で保護活動をされるのは本当に素晴らしいです、ご希望を良い形で実現したいですね。頭数の他に保護活動を継続していくための住まいのご希望についてお伺いできますか?」

香川さん「まずは今の子に対応したドッグランが欲しいです。実は嵐の日でも外じゃないとトイレしなくて。草と認識すれば人工芝でもするのですけど、平らな床のベランダではできなくて……」

石原「ベランダに人工芝と庇があれば対応できそうですが、人工芝の匂いやメンテナンスの課題がありますね。」

香川さん「雨の日はトイレの度に犬が濡れているので、人工芝のメンテの方が楽かなぁ(笑)。あと、防音性も大事です。今の子は静かですが、以前飼っていた子が吠えてトラブルになって……その時は本当にストレスが溜まってしまいました。」

石原「住まいすべての防音性能を上げるのは予算もいるので、特に対策が必要な場合に備えて専用の“防音個室”を1つ設けるのがコスト的には現実的かもしれませんね。」

香川さん「防音個室良いですね、いろんな用途に使えそうです(笑)。それから加齢による変化への対応が気になります。今まで6匹の犬を看取ってきたので大体イメージできていると思うのですが、分離不安が進むし、いろいろ考えないといけない。」

石原「徘徊、夜鳴き、立てなくなって床ずれができるなど、大変ですよね。でも家の計画としては、防音や防滑、トイレの問題など、基本的な性能の確保がポイントだと思います。」


3. 日々の暮らしの工夫と困りごと

石原「その他で、今のお住まいで困っている点や工夫されていることがあれば教えてください。」

香川さん「部屋は20㎡の1Kで狭いのですが、散歩の環境が良いので問題なく過ごしています。ただ床の汚れや抜け毛、カーテンの汚れはすごいです。毎日雑巾で拭いています。」

石原「掃除機は使わないのは音問題ですか?」

香川さん「はい、うちの子が音に敏感で。掃除機の音って犬には優しくないイメージで。……また、ルンバは急に動き出すので怖がりますよね、慣れさせればいいのかもしれないですが、心配なので人力でやっています。」

石原「細やかに配慮してもらえて犬も幸せだと思います。玄関での足ふきやベッド等についてもお聞かせいただけますか?」

香川さん「玄関は狭くて、雨の日の着脱やリード・服の整理が大変です。足を洗うスペースは無いので、体重が16㎏ありますが散歩から帰ったら抱えてお風呂に直行しています。

ベッドは2か所つくっています。一か所は保護施設から家に来た時に真っ先に行ったコーナーで、いまでも一人になりたいときにそこに行きます。もう一か所は私といたい時に来る場所です。どちらもケージではなく、少し窪んだベッドにタオルを置いています。」

石原「先ほど床の汚れについてお話がありましたが、滑り止めの対策はどうされていますか?」

香川さん「フローリングの上に一部タイルカーペットを敷いています。犬がおなかをこわして粗相したことがありましたが、その時は一枚取り換えて対応、というようにしています。」

石原「タイルカーペットに1㎝位段差ができますが、今後高齢になったとき引っかかりそう、ということはないですか? 例えばフローリングを剥がしたエリアをつくってそこにタイルカーペットをはめ込むと段差ができないので良いかなと思いました。」

香川さん「老犬になると1cmの段差でもつまずくので、そのアイディアは良いと思います。」

石原「壁の汚れは如何ですか?」

香川さん「カーテンに体をこすりつけて下の方は色がついていますね。壁も茶色くなっています。でもお家をよごすのはそのくらいです。あえて言えばシャンプーでブルブルして散る水くらい(笑)。」


4.平屋の戸建てへの憧れ

石原「戸建てへの関心もおありとのことで。」

香川さん「はい。パートナーと将来的に一緒に住むなら、庭付きの家がいいなと思っています。先ほどお話した今の犬のトイレの問題もあるし、そこに至る段差の少ないスロープや、足洗い場、お湯が出る屋外水栓があると理想です。」

石原「室内のトイレも必要ですよね?」

香川さん「今の犬のための庭とは別に、落ち着く囲まれた空間が欲しいです。リビングにあると臭いが気になるので、程よい距離感のある配置がいいですね。」

石原「ありがとうございます。 今回、ヒアリングに基づいて、どのくらいの土地にどんな家が建つのかを知りたいとのことでしたが、家の構成でご希望はございますか?」

香川さん「犬との生活と老後を考えると平屋が理想。でも予算的に無理だと思うので、できるだけ1階に機能を集めた2階だてが現実的だと思っています。個室は2つ希望で当面1室はテレワークスペースとして使います。」

石原「ありがとうございます。今回はシミュレーションのためにプランを作成するので、第一希望である平屋でやった場合にどうなるか、シミュレーションしてみましょう。」


5.あったらいいなを図面化

―上記の他にも家の計画に関するヒアリングを行い、お時間を2週間いただいて、土地検討のためのラフプランを作成しました。

・建設希望地:パートナーさんが住まわれている拝島 

・選定土地:拝島駅から徒歩12分の敷地面積約120㎡の土地。西と南に道路

・概算費用:土地1800万円、建物3000万円、諸費用,設計費用700万円 (税込 仲介手数料、諸経費、地盤改良予算含む、家具カーテン引越し費用等別)

・提案プラン:建築面積72.5㎡ 延床面積68.9㎡

石原「プランのポイントは大きく下記になります。」

1.2階建てが建っていた土地に、効率的に平屋を計画し、犬の分離不安や住まい手のバリアフリーに配慮。

2.2面が道路に面する南西の角を庭にして高い壁で囲い、建物の左半分のとんがった四角形を大きな一室空間のようにした。雨の日も犬が中庭でトイレができ、前を通る人の視線を気にせずに出入りできる。カーテンの無い生活も可能。

3.残りの左半分は犬の行動を制限できるようにしつつ、外の汚れを犬が持ち帰ることに配慮した計画(足洗動線と人の動線が交差しない等)。

香川さん「この位の土地に平屋が建つのが先ず驚きです。足洗いの動線は一回脱衣に行っていますが、直接寝室にも行けますか?」

石原「”ユニットバス”ではない“造作”の浴室(浴槽やシャワーをバラバラに購入し、防水やタイルを貼りながら作る浴室)ならできますよ。価格とのお見合いがありますので、まずはユニットバス想定で書かせていただきました。

内部をもう少し詳しくご説明すると、香川さんのペット配慮の特徴的な装備として下記があげられます。」

①玄関ポーチには深めの庇を設置:雨の日に玄関に入る前に2匹の犬の体を拭いたりするときに役立つ。

②玄関に飛び出し防止ガード、脚洗いのための水回りへのダイレクトな動線、シューズインクローゼットと玄関内に多めに収納を設置。

③犬トイレは室内と外部両方に検討。内部は壁面収納の一部をくりぬいて、少し奥まった位置に計画。

④中庭は人の生活に空間的な広がりと明るさをもたらすだけでなく、a)犬の外部トイレ、b)香川さんが個室で仕事をしてる様子の犬が見ることができる、c)2匹以上の犬が走り回る運動スペース等、いろいろな役目を果たします。

香川さん 「概算と思いますが予算に近い金額で平屋が可能なんですね。中庭は一部デッキ、一部芝にするか、人工芝を敷いて下にトイレを仕込んでもいいですね。室内のトイレの距離感はこんな感じで十分です。」

石原「2階建てにするとリビングはもう少し広くできますが、中庭と自由に行き来すればこのサイズでも広がりのある生活ができると思います。今回は土地と建物の関係を確認するために作成していますので、マンションや2階建ての場合はプランの考え方も変わります。もしこの計画の延長で考える場合は、土地選定を進めつつ、犬のベッド、床の素材、さらには人にとっての使い勝手等、様々課題をより具体的に考えていくことになります。」

香川さん 「この案をベースに新しい住まいをどのようにしていくか、考えていきたいと思います。ありがとうございました。」


むすび

保護活動を生活の一つの軸にされた香川さんとのインタビューを通じて犬の個別のニーズによって計画の内容が考え方が大きく変わることや動線のニーズについて議論を深めることができました。香川さんが犬の保護活動をより大きく展開できるよう、引き続き応援していきたいと思います。

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