
お名前:戸田さん
お住まい:東京都・区分マンション
ペット:猫2匹
家に迎えた保護猫たちが、いつのまにか想像以上に大きく育ってしまった…! そんな嬉しい誤算で家の広さの課題を抱えるのが、今回の相談者・戸田さん。ご主人と高校・中学に通う2人のお子さん、そして7ヶ月にして6kg超の保護猫2匹が一緒に暮らす3LDKの賃貸マンションは、十分な広さがあるようで、少なからずサイズ感でストレスを抱えているそうです。
そこで、石原と「人も猫も、ストレスなく快適に暮らせる住まいとは?」というテーマで話し合うことに。
戸田さんが求める「壁紙の耐久性やキッチンへの立ち入り制限、脱走防止策」など、ペットオーナーならではの悩みにどうアドバイスをしたのでしょうか?
■猫の成長に合わせて住まう
石原:
「よろしくお願いします。家族もペットも成長していくことはとてもうれしいことですが、成長に伴うニーズの変化に合わせて住んでいくためには、手を加えられるように将来を見据えておく必要があります。
子供のための家の議論はこれまでも多くなされていますが、ペットはどうしても場当たり的になりがちで、不具合があってもそのままにしてしまうケースが多く、結果的にペットの健康に問題が発生してしまっているのが実情だと思います。
私も家の中で生活する多頭の猫を見つめる日々は『どうしたらペットとも人も快適に暮らせるか?』を考える貴重な体験になっています。今日は戸田さんが抱えている住まいの悩みをぜひ伺えればと思います。」
戸田さん:
「こちらこそ、ありがとうございます。私たちは今、賃貸の3LDKマンション(70~80平米)に家族4人+保護猫2匹で暮らしています。この保護猫が想像以上に大きくなって、人間のほうが少しおどおどしている状態です(笑)。壁紙の傷みとか、キッチンへの侵入・脱走防止など、悩みがいくつかあって…。」
■戸田さんの現状:「想定外」の大型猫
戸田さん:
「猫は保護団体から迎えたオスの兄弟で、同じキジ白柄なんですが、とにかく成長が早いんです。最初は『保護猫だし、小柄かな』と思っていたら、もう6kgオーバー。2匹合わせると12kgです(笑)。
それでも懐いてくれるのは可愛いんですが、室内環境は当初の想定とはだいぶ違うなと感じることが増えましたね。」
石原:
「7ヶ月で6kgは驚きですね。拝見はしていないのですが、おそらく太っているのではなくて骨格が違うんでしょうね。きっと力もあるので、猫のための装備も耐久性をしっかり考えないといけません。もし賃貸だとしたら、柱や壁に釘を打ったりはできないでしょうし…。」
戸田さん:
「そうなんです。特に壁紙がボロボロになりつつあって、退去時にどうするんだろうと頭を抱えてます。」
■ペット共生住宅に求める設備・間取り
・壁紙の耐久性と爪とぎ対策
石原
「壁紙は、猫ちゃんが爪で引っかくとあっという間にボロボロになりますからね。一般的な石膏ボードや仕上げのクロスでは耐久性に限界があります。特に壁のコーナーで研ぎたがるので、研ぎそうなところに先手を打って壁付けの爪とぎを設置しておく方がいいです。」
戸田さん
「確かに、猫ってコーナーの角とかちょっと出っ張ってる部分が大好きみたいで、そこが限りなく傷んでます。普通の賃貸じゃ、そこまで考慮されていないのですが、危険な部位にうまく誘導をすれば対応できそうですね!」
・キッチンの独立性
戸田さん
「あとは、どういうわけかキッチンに入ってきて、シンク周りをペロペロなめようとするんですよ。油が落ちていることもあるから危険だし、できれば猫が入り込めない独立キッチンにしたいと思っています。
うちの猫は危機感ゼロで、食事を作っている横でにおいにつられてウロウロするんです。熱い鍋に手を出しかねないし、できればもう『個室キッチン』みたいに完全に仕切れたら嬉しいなと思います。」
石原
「聞くところによると、猫の体調不良の原因がキッチンの床に落ちた調味料の舐めすぎだった、というケースもあるそうです。猫は味の濃いものが好きなので、やはりキッチンに入らない仕組みづくりは重要だと思います。しかも大きめの子は普通の柵を軽々飛び越えちゃいますからね。
キッチンが最初から部屋になっていて分かれている場合は、建具の鍵の問題さえクリアすればいいのですが、LDKが一室にある場合は、間取りによってできること、できないことがありますよね。
壁付けのキッチンが部屋の奥にある場合は広さにゆとりがあれば、既成の家具やDIYを頑張ればうまく区画できます(図参照)。
ここまでのDIYはかなり大変ですが、突っ張りのシステム等をうまく活用すれば不可能ではないです。ホームセンターで売っている針金のメッシュで区画すると、人がケージに入っているようになってしまうので(笑、アクリルなどで間仕切って視線は確保したいところ。ただ完全に区画してしまうと今度はキッチンに冷暖房が効かないので、目立たないところで部分的に網を使って通気性を確保したり工夫が必要です。
一番難しいのは建具ですね。玄関等の飛び出し防止用の既製品を組み合わせるのが良いです。併せてキャットウォークを組み込めると猫の安全対策とストレス対策が同時に解決できますね。
DIYでいろいろなパーツを組み合わせるとインテリアの統一感は望めないので、理想を言えばこうした組み合わせを想定したデザインユニットがあるといいですね。
以上は壁面キッチンの一例ですが、対面キッチンも、キッチンの囲い壁で同じように仕切ることができます。
一方で面積的にこうした細工ができないことも多いので、その場合は発想を変えて、猫を躾て少なくとも人が作業をしているときは入らないように覚えてもらい、普段から片付けをしっかりする、ということになろうかと思います。
戸田さん
「現在は賃貸なので、当面は躾と片付けかもしれませんね。でも成長をもう少し見守って仕切りを設置することがあるかもしれないと思いました。」
・玄関の脱走防止
戸田さん
「それから、現在はまだ怖がって実際に逃げたりすることは無いのですが、玄関を開けると扉のすぐ内側に猫がいることもあって、びっくりすることが増えてきました。いずれ脱走するのではないかと心配で…。
石原
「たぶん小さい時から室内で育ったとのことでしたので、興味はあるけどまだまだ怖い、という状態ではないかとおもいます。それでも間違いがあってはいけないので、先ほどのコーナー爪とぎと同じく、突っ張り棒で設置できる市販の飛び出し防止建具もありますので、賃貸でも十分な対策ができると思います。
問題は猫が外の楽しさを知ってしまい、一瞬の隙を狙って脱走を試みるようになっている場合ですよね。飛び出し防止のゲートがうっかりあいてしまっていると怖いですよね。これは賛否がありますが、外に出ようという必死な姿を思い返すと、ハーネスをつけて散歩させてあげてもよいのかなぁ、と思ったりします。私の近所でも猫の散歩をみかけることがあります(笑。
■今後の展望と情報発信
石原
「戸田さんのように、子どもがある程度大きくなったから『対面キッチンでなくてもいいかな』と思い始めたり、壁紙や家具を守りつつ猫にストレスをかけないレイアウトを望んだりするケースは増えています。
当社としても、ペット可物件が少ない現状を変えたいので、今後メールマガジンで“ペット共生型の新着物件”や“賃貸マンションでの工夫”などの情報発信を始める予定なんです。もしよろしければご登録いただければ嬉しいです。」
戸田さん
「ぜひお願いします。正直いまの3LDKでも暮らせないわけじゃないけれど、猫たちが本格的に爪とぎ期に入ると壁紙が壊滅状態になりそうで…(笑)。独立キッチンやキャットウォークなど、“最初からペット共生を想定した物件”が見つかれば、少々家賃が高くても検討したいなと思っています。」
■結び
家族4人と保護猫2匹がにぎやかに暮らす戸田さんの住まいは、現状でも決して悪くはないけれど「猫目線で考えた住宅」ではないがゆえに、小さなストレスが積み重なる様子がうかがえました。とりわけ壁紙やキッチン侵入などは、多くのペットオーナーが抱える悩みではないでしょうか。
しかし、石原さんのお話しで見えてきたのは、住宅の仕上げやレイアウトを少し変えるだけで、猫の運動量や安全性が確保でき、人間の負担もずっと減らせるという可能性とともに、ペットの躾や飼い方もあわせて考えることで、人にとっても猫にとってもより快適な生活が実現できる、ということでした。
戸田さんの“猫とキッチンをうまく分けたい”という要望が、これからどのような形で満たされていくのでしょうか。猫たちがのびのび暮らす姿を想像しながら、より理想に近づける物件やリノベーションの動向にも注目していきたいですね。