
お名前:中林さん
お住まい:神奈川県・区分マンション
ペット:小型犬2匹
トイプードル2匹とともに暮らす中林さんが語るのは、「ペットと共に生きる空間」と「街に開かれた住まい」への夢。住まいへの理想、今の暮らしのリアル、そして未来への構想――。共感と発見に満ちた対話をお届けします。
■ペット共生賃貸に再生された団地
石原:先ず現在のお住まいについてお話をお聞かせいただければと思います。
中林さん:はい、神奈川県にある全棟リノベを施した団地に住んでいます。ペット共生を謳っていて、ドッグランやワンちゃんOKのカフェも敷地内にあって。最初はペットを飼っていなくて偶然住み始めたんですが、今はトイプードルを2匹(1歳と1歳3か月)と暮らしていてとても気に入ってます。

ペット共生賃貸に再生された団地 インテリア (WEBサイトより)
石原:ペット共生という部分で、住まうにあたって何かルールがあるんですか?
中林さん:入居時に『吠えてもお互い様』という趣旨の誓約書を書くんです。だからワンコの鳴き声も許容されていて、すごく気が楽です。皆それぞれに犬のいる暮らしをしていて、安心できる空間ですね。
石原:それはいいですね。逆に、何か課題に感じることはありますか?
中林さん:“共生”とはいえ、犬との生活に配慮された設計ではないんです。収納が少ないので、犬用品が丸見えになるし、クレートやゲージの置き場も限られています。人間にとっての快適さはあるけど、犬にとっては“居場所”がないなと感じてます。
石原:なるほど。キッチンの裏にまとまったWICがありますが、きれいに住もうとおもうと、人の収納とは別にペット専用の収納が一定サイズ必要ですし、歩き回るスペースも必要。37㎡の住戸にワンチャンとのびのび暮らすには、家具を減らしたりひねりのある工夫が必要かもしれません。
■新しい住まいへの夢
石原:多少の不自由はありながらもとても気に入っている現在のお住まいですが、新しく家を建てることもお考えだそうですね。
中林さん:ペット可のSOHOをつくりたいと思っているんです。今は会社員をしながら、自分のビジネスも並行してやっているので、自宅をSOHOとして整備したいなと。ただ、ペットOKでSOHO利用もできる物件って、本当に少ないんですよね。
それに、将来的には小さなカフェスタンドのような商いもしてみたいと思っていて。犬が自由に過ごせて、来てくれた人にも自然と目に入るような、そんなあたたかい空間をイメージしています。

ペット可のSOHOもあるオフィスコンプレックス「LANTIQUE」(恵比寿)
石原:ペット可SOHOは都心にはありますが、家賃がかなり高めに設定されていますね。
中林さん:そうです。“見せる暮らし”じゃないけど、生活に犬が溶け込んでいるような感じです。今の住まいが好きなんですが、敷地内にあるドッグランも畑も使われてなくて、ポテンシャルが活かされてない気がして。だから、自分で“開かれた場”を作りたいんです。
石原:素敵な構想ですね。個人の自宅の一部が街に開かれていてコーヒー等の商いをして、さらにペットも共生している。衛生法の整理をすれば実現できると思います。自然とペット好きな方が集まりそうですね。
中林さん:実は最近、メスのワンコが急な病気で手術することになって、一泊の入院をしたんです。そのとき初めて“家族を守る”って意識が強く芽生えました。実家ではペットがいる生活が当たり前で、そこまで意識してなかったんですけど。
石原:責任を持って育てる立場になって、見えてくることってありますよね。
中林さん:ほんとにそうで。あのとき自然と涙が出て、命の重さというか、大切さを実感しました。ペットも家族の一員として守らなければという気持ちが湧きました。
石原:ペットときちっと向き合いながら暮らすと本当に人生が深まりますよね。限られた時間をどう豊かにするか。そのための“器”として、家の役割は大きいと思います。プラン相談をご希望いただいているので、そんな中林さんの理想をプランに描いてみたいと思います。
中林さん:ありがとうございます。こうして話を聞いてもらえただけでも、自分の中でだいぶ整理できました。
■「犬と暮らす、街に開かれた住まい」プラン提案
―家の計画に関する詳細ヒアリングを行い、プランを作成しました。
・建設希望地:中央林間近辺、街に開かれた建物が作れる場所
・選定土地:南林間から徒歩9分の敷地面積約75㎡の土地・駅前商店街の道路に面する
・概算費用:土地1980万円、建物2920万円、諸費用・設計費用830万円
(税込 諸費用には仲介手数料、銀行手数料等諸経費、既存建物解体費用、地盤改良予算等含む、家具カーテン引越し費用等別)
・提案プラン:建築面積51.5㎡ 延床面積96.5㎡
石原:先ず外観のイメージをご覧いただきます。

外観イメージ
切妻(三角屋根)を載せた住宅らしい外観で、1階に大きな腰窓があり、中はコーヒーを出せる店舗部分とペットと過ごせるオフィススペースを想定しています。(その間には衛生面の関係でガラスの間仕切りを設けます。)

1階店舗とSOHO
道路に面するベンチや、少し飛び出した2階の出窓は、それぞれが街、ペットとの暮らしを家の内外で緩やかに浸透させる要素になっています。
中林さん:この雰囲気は希望していたものにとても近いです。
石原:この後説明しますが、2階の出窓はヌックになっていて、家の中での犬との生活が外ににじみ出るような感じになると思います。
・内部
石原:下記がプランで、2階のロフトと吹抜けがあるLDKを中心に、広がりを感じるプランニングを心掛けました。

LDKそのものは16畳位で、ヌックや階段、廊下を合わせて24畳の空間になっています。
コンパクトな家でもその中で犬が自由に歩き回るスペースを如何に確保するかが犬との生活で大切です。

2階LDK
犬との暮らしのアイディアとしては下記を盛り込みました。
①犬と寛いだり、街とのつながりを感じられるヌック
先ほどの外観の四角い出窓は小上がりのヌックになっていて、外部の眼下に街並みを、
室内には吹抜けとロフトを見られ、ペットと快適に過ごせる空間になります。

キッチン・ヌック周り
②階段に犬が上り下りできるスロープ
犬種とスロープ角度・長さの検証が必要ですが、抱えて上がらず上下ができれば犬に
とっても快適な要素となり、特に段で腰を痛めるリスクを減らすことに役立ちます。
③人のトイレを出たところに犬のトイレスペースを設ける
人と犬のトイレをまとめ、居室エリアから少し距離感を持たせ、失敗を想定した床仕上げに。
人のトイレの換気扇の吸引によって部屋に匂いが籠りにくくするなど考慮。

階段スロープ・ペットトイレコーナー(スロープの勾配はイメージです)
④散歩の支度や帰った後の身支度がしやすい、通り抜けの収納と水回り計画
玄関周りの収納は特に犬との生活には欠かせません。
⑤籠ってテレワークをするための踊り場から入る書斎
仕事は1階の店舗の隣でもできますが、犬の吠えや集中する観点で、階段室横の書斎は利便性の高いスペースになります。
中林さん:ヌックは家のコンセプトに叶った計画で、できたらとても良いと思います。犬トイレの位置も離れているけど気配が十分に判る位置で適切だと思います。テレワークスペースは実際必要だと思いますし、音を考慮した位置になっていてあったらすごく有難いです。階段は実際に使うかは確認が必要かもしれません。
予算感は少し上振れていますが、それも含めて実現の射程圏内の内容です。何より場所の選定から始まり、生活を思い描ける提案をここまで細かくつくっていただけてとてもありがたいです。
この案をベースに具体的な家づくりを真剣に考えていきたいと思います。ありがとうございました。
■結び
中林さんの街に開かれたペットと暮らす家は、犬の居場所が無いと感じられている今のお住まいを踏まえて、複数のアイテムで犬との生活が緩やか、かつ積極的に街との関係性を創り出す計画となりました。
これから本格的に家づくりを考える中林さんにとって、ペット共生住居の可能性を具体的に感じる良い機会になったようです。
これからも引き続き中林さんの家づくりを応援していきたいと考えております。