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10を目指さない賃貸共生

vol.3 

以前のコラム( https://musubihouse.com/article/ishihara-column-vol1/ )で、ペットと暮らす住まいにおける床材は、デザインニーズに応じて柔軟に考えたいと書きました。
今回はその考えを「賃貸住宅」に絞って、設計と運用の両面から具体的に考えてみたいと思います。

誤解を恐れずに言えば、必要十分な完成形を10とした場合、賃貸におけるペット共生の基本性能は7〜8程度、楽しさは2〜3にとどめるのが、家賃とのバランスを考えた現実的な水準ではないかというのが、いまの私の感覚です。

基本性能として重要なのは、床と壁、そして収納とペットトイレのスペースです。
これらは後から簡単に変えられないため、ペットを飼わない可能性があっても、一定のコストをかけておきたい部分です。


小型犬などは床が滑りやすいことで足腰を痛める可能性があるため、ここは手を抜けません。ただし完璧を求めるのも現実的ではありません。カーペットはメンテナンス性の面で賃貸には向かないため、多少の滑りは許容しつつ、滑りにくいフローリングを選ぶのが妥当な着地点です。
ヒアリングの中でも評価が高かったのは、海外の土足生活を前提に開発されたSPC(Stone Plastic Composite)フローリングです。石灰石パウダーと塩化ビニル樹脂を主原料とするため耐水性が高く、はめ込みで置き床式に施工できるため、万が一トイレの失敗で傷んでも部分交換が比較的容易です。浮造り風の仕上げで滑りにくい製品もあり、耐久性とメンテナンス性の両面から、賃貸の基本スペックとして相性が良い素材といえます。


腰壁にパネルを張る方法もありますが、そこまでしなくとも、硬めの高耐久クロス(いわゆる1000番台)で凹凸が少ないものを選べば、実際には大きなダメージは起きにくいものです。初期費用はやや上がりますが、張り替え頻度が下がることで結果的にコストパフォーマンスは高くなります。入居者にとっても安心感につながります。

収納とペットトイレのスペース
収納に吊り棚を設け、上部にペットグッズ、下部にトイレを置けるようにしておくと、使い勝手が大きく向上します。トイレスペースは猫のマーキングを減らす重要な設備で、ペットを飼っていない場合でも、掃除ロボットを置くスペースとして活用できるため、入居者を限定しない計画になります。

重要なのは、これらの基本性能が「ペット専用」になりすぎないことです。
ペットを飼っていなくても住戸スペックとして評価される計画にしておくことが、結果として運用の幅を広げます。

一方で、「楽しさ」を過度に追求しすぎるのは賃貸経営としてはリスクになり得ます。
入居者を強く選ぶ設えに予算をかけすぎると、汎用性が下がってしまうからです。

ペット共生をうたいながら、どこまでを“基本性能”とし、どこからを“カスタマイズ”にするのか。
そのバランスこそが賃貸設計の要だと考えています。

この「カスタマイズ」の考え方については、次回のコラムで改めてご紹介したいと思います。

vol.2 ペット共生集合住宅の二つの側面

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