命を守る
人であれ、ペットであれ、命を守ることは住宅において何よりも重要です。私の家では命の危機に直結する箇所としてお風呂やトイレ等の水回りのセキュリティを意識しています。とくに子猫は注意が必要です。我が家では防止策として扉に自閉式蝶番をつけた上で、ちゃんと閉まっているか家族全員で注意しています。また基本的にお風呂のお湯は溜め置きしておかないように家族ルールを決めました。水関係だと、意外と知られていないですが、アルカリイオン水のでる浄水器はNG!
猫にとってとても危険な尿路結石の原因になります。現在は当たり前になりましたが、猫を放し飼いにしていると交通事故の危険もあります。
大塚) キッチン周りも危険が多い場所です。気をつけていても、わずかな調味料やスナックのカスなどが落ちていることがあり、その上をペットが歩けば当然付着します。ペットは毛繕いをするので口に入ってしまう可能性が高くなります。ものによっては下痢や嘔吐を引き起こし、中毒につながる場合もあります。 また、飼主が気がつかない間に、塩分摂取が増えてしまい、ペットが水分をたくさん摂る症状で異変に気がつくこともあれば、知らないうちに慢性腎不全に繋がっているような怖い事も起き
ています。他には洗濯機周りのスペースでも同様の注意が必要です。洗剤などが付着し舐めることで消化器症状やアレルギーを起こす事もあります。いずれにしても危険となる生活スペースにはペットが入らないような対策ができるような工夫が必要だと思います。人間のためにも空気の入れ替えは大切ですが、例えば近所の工事などで出る排気など、見えない有害物質が入ってこないようにすることも重要です。ほこりのように軽いものは静電気でペットの体につきやすいためです。その為、家には安全な換気設備を設けることが必要だと思います。
犬より猫の方が高いところにも登れますので動くスペースも多く、注意すべきポイントも
多いかもしれません。
ストレスについて
人間と暮らしていると猫にストレスがかかることも大きく、毛が抜けてしまうこともあります。可愛いからと言って撫でてあげるとかえってそれがストレスになる場合も。猫それぞれのストレスがあるので、それに合わせないといけません。ストレス軽減のために、部屋数は飼っている匹数プラス1部屋が必要とよく言われます。トイレも同様、複数必要です。
ただ日本ではなかなかそれだけの部屋数は取れないという問題があります。猫1匹だと可哀想に思うので、仲間と同じ空間で生活させてあげたいと想いがちですが、「日本の住宅環境とストレス」において先生が感じることはありますか。
大塚) 一頭で飼う場合と多頭飼いの場合では猫にとってのストレスの考え方は変わってきます。多頭飼いの場合は、猫の性格の違いによって一緒の方が良いケースと、スペースを分けた方がストレスがかかりにくくなる場合があります。猫同士遊べるようなスペースが良い場合もありますが、他の猫がいるとストレスになる子もいるので猫の性格にもよります。1人が落ち着く子には部屋を分けなくても、見えにくいスペースなどを用意してあげるなどの工夫がいるのかなと。猫の性格を見ながら考えていくのが良いかと思います。他に空間としての工夫として、猫に上下の動きをさせてあげることはやはりストレスを溜めないためには必要だと思います。また外に出なくても、外が見えたり光を感じたりする環境づくりは体にとってとても大切です。生活をしている上で、猫の行動をよく観察してもらうことは大切だと思います。例えば、毛づくろいが増えている場合、ストレスや病気が隠れていることもあります。気になる行動の変化などがあれば、(隠れていて気づけていないこともあるので)動物病院に相談をしてもらえればと思います。新しい環境に迎え入れたばかりのケースでは、環境に慣れるまでのストレスがかかりやすいので特に注意して観察する必要があります。また他には、猫はトイレにこだわりが強い動物です。トイレにおいてまず考えるべき事は衛生管理です。できるだけ綺麗な状態をキープしたいものです。汚れているとトイレを我慢してしまう事はよくある事です。我慢すれば膀胱炎などにもつながりかねません。そして場所。安心できるスペースでなければいけません。見られていると安心できない性格であればトイレに屋根があった方が良いかもしれません。そしてトイレ砂の材質などは猫によってこだわりがあり、トイレのしやすさに影響をします。砂も1週間取り替え不要なものもありますが、そういったものは人間の便利さを優先しています。色や匂いの変化などを見ることで体調管理に繋がるので毎日変えてあげることが゙望ましいかと。多頭飼いの場合は、縄張り事情なども含め、衛生管理なども含め、ストレスが溜まりやすいので、(トイレだけではありませんが)環境を整えてあげることがストレス軽減につながるのではないでしょうか。保護猫/保護犬の場合はさらに配慮しながら見守ってあげることが大切だと思います。
石原) 多頭飼いの場合、「生活する場所、トイレの場所、距離感」は大事だと感じています。保護の場合はトライアルで数ヶ月、新しい家に馴染むことができるのか試すことができます。中には新しい家が合わずに戻ってくる子もいました。間取りや住宅環境によっても過ごし方は変わります。飼い主がどれだけ「暮らす環境を整えてあげられるか」は努力が必要です。限られた面積、部屋数の中で、いかにペットの落ちつける場所を整えて、人にとっても私が設計する住宅では人はもちろん、ペットもストレスなく健康に暮らせる家を考え、設計したいと思っています。また多くの犬猫を見てきたので、少しでも飼い主さんの助けになるようなアドバイスができればと思っています。
–
ペットと暮らすには正しい知識を持った上で飼育していくことが重要です。今回は大塚先生に家に潜む危険とストレスについてお伺いしました。人もペットも心地よい空間づくりには飼い主の知識も欠かせませんね!
今回は貴重なお話ありがとうございました。
専門家対談リレーは続きます。ぜひ次回もご覧ください^ ^
編集:アセットコミュニケーションズ 川島・下山